紹介予定派遣について調べると、「やめたほうがいい」という声も見かけます。たしかに、直接雇用(正社員や契約社員などとして、派遣先の会社に直接雇われること)が保証されるわけではありません。私が担当した人の中にも、直接雇用まで進めなかった人がいました。
一方で、働きながら仕事の中身や職場を確かめてから、その会社に入るかを決められる働き方でもあります。
私はリクルートで派遣営業をしていたころ、紹介予定派遣をずっと担当していました。扱った件数は、100件以上になります。この記事では、そのときに派遣会社の側から見えていたことと、厚生労働省の資料で確かめた決まりを合わせて、紹介予定派遣のデメリットと、損をしないための確かめ方を書きます。
しまえなが紹介予定派遣は、やめたほうがいいの?



先に結論を言うと、紹介予定派遣は「働いてから会社を決めたい人」に向いています。一方で、派遣期間を挟まずに直接雇われて働きたい人、働きぶりで直接雇用を判断されることに強い負担を感じる人、言われた仕事だけをしていたい人には勧めません。理由を順番に説明しますね。
- 私は、働いてから会社を決めたい人に紹介予定派遣を勧めます
- 派遣期間を挟まずに直接雇われて働きたい人、働きぶりで直接雇用を判断されることに強い負担を感じる人、言われた仕事だけをしていたい人には勧めません
- 令和6年度に直接雇用になった人数は、派遣された人数の約54%(個人の採用確率ではない)
- 申し込む前に、直接雇用後の雇用形態・給料・試用期間の予定を派遣会社に聞く
紹介予定派遣のしくみ


紹介予定派遣は、派遣社員として働いたあとに、派遣先の会社に直接雇ってもらうことを予定した働き方です。労働者派遣法で定められた制度で、派遣会社が「派遣」と「職業紹介」の両方を行います。
普通の派遣と違うところは、主に3つあります。
- 同じ派遣先で働く期間は、最長6か月です
- 派遣が始まる前に、派遣先の会社と面接をしたり、履歴書を送ったりできます。普通の派遣では、派遣先が事前に面接をしたり、履歴書を求めたりして働く人を選ぶことは、原則として認められていません
- 派遣期間を終えて、働く人と派遣先の会社の両方が合意すれば、直接雇用になります(6か月より早く切り替える方法は、あとの「知っておくと損しない決まり」で書きます)



派遣期間は最長6か月ですが、6か月いっぱいまで続くことはほとんどありませんでした。最初の契約は2か月ほどで結ぶことが多く、契約を更新するかどうかを決めるときに、直接雇用にするかどうかも話し合っていました。そこで決めきれないときは、1〜2か月更新して様子を見ることもありました。そのため、たいていは2〜3か月ほどで決まっていました。
どれくらいの人が直接雇用になっているのか
厚生労働省の集計では、令和6年度に紹介予定派遣で派遣された人は25,535人でした。同じ年度に直接雇用になった人は13,881人です。直接雇用になった人数を派遣された人数で割ると、約54%になります(割合は、集計の人数をもとにこのブログで計算しました)。
| 令和6年度の集計 | 人数 |
|---|---|
| 紹介予定派遣で派遣された人 | 25,535人 |
| 直接雇用になった人 | 13,881人 |
ただし、その年度に派遣された人と、その年度に直接雇用になった人は、同じ人とは限りません。直接雇用になった人数には、前の年度に派遣が始まった人が含まれることもあるためです。そのため、この人数比を個人の採用確率として読むことはできません。
ここからは全国の集計とは別に、私が担当していたときの話です。そのときの感覚では、直接雇用まで進んだ人と、そうならなかった人は半々くらいでした。



担当していたときは、直接雇用まで進みやすいと感じていたの?



担当していたときは、普通の転職より直接雇用まで進むハードルが低いと感じていました。会社は働きぶりを見て判断でき、働く人は仕事や職場を確かめてから決められます。そうやって双方が試しながら進められるぶん、ハードルが下がるんだと思います。ただ、直接雇用が保証される制度ではないことを理解して申し込んでください。
よく言われるデメリット


正社員になれるとは限らない
直接雇用にならないこともありますし、直接雇用のあとが契約社員になる求人もあります。



直接雇用になったあとは、私が関われることはあまりありませんでした。それでも、企業の担当者から「契約社員だったあの人が、正社員になりましたよ」と聞くことはありました。
「紹介予定派遣=正社員になれる」と思い込んで申し込むと、あとで想像と違ったと感じるかもしれません。求人に書かれた直接雇用のあとの雇用形態は、必ず確かめてください。
派遣先の会社の選考を受けることがある
紹介予定派遣では、派遣が始まる前に、派遣先の会社が書類選考や面接をすることがあります。



選考で見られるところは、普通の転職の選考とあまり変わりません。面接をする会社もあるので、紹介予定派遣の選考は、基本的には人材紹介(転職エージェント)と同じだと考えてください。
派遣中の働きぶりが、直接雇用の判断材料になる
派遣期間は、派遣先の会社にとって「この人を雇うか」を考える期間でもあります。働いている間の仕事ぶりなどが、雇うかどうかを決める材料になります。評価されながら働くのが苦手な人にとっては、気が休まらない期間になるかもしれません。
直接雇用にならなければ、次の仕事探しが必要なこともある
直接雇用にならなかった場合は、派遣期間が終わると、次の仕事を探す必要が出ることがあります。派遣会社から次の仕事を紹介してもらえることもあります。私が担当していたときも、見送られた人には、普通の派遣と同じように別の仕事を紹介していました。
派遣会社の内側から見たデメリット
ここからは、私が派遣会社の営業として経験してきた話です。
会社によっては、紹介手数料のしくみが最初の年収に影響するかもしれない
派遣会社は、派遣している間は派遣料金を受け取ります。そして、直接雇用が決まると、派遣先の会社から紹介手数料も受け取ります。紹介手数料の額は、直接雇用後の年収に一定の率を掛けて決める契約もあります。この決め方だと、派遣先の会社が年収を高く設定するほど、派遣会社に払う手数料も増えます。



会社によっては、最初の年収をあまり上げたくない、という考えもあったのかもしれません。もちろん、すべての会社がそうというわけではありません。
私が担当していた方は、直接雇用になったあと、派遣のときより給料が上がっていました。
紹介予定派遣では、派遣会社は派遣を始める前に、直接雇用になったあとの業務内容や給料、試用期間などの予定を、働く人に示さなければならないと法律で決まっています。申し込む段階で分からなければ、派遣会社の担当者に聞いてください。
示された年収に納得できないときは、派遣が始まる前に、派遣会社の担当者に相談してください。
派遣中から、直接雇用後を想定した働き方を期待されることがある
紹介予定派遣では、派遣中の雇用主は派遣会社です。それでも、私が担当していた中には、派遣中から正社員に近い働き方を期待される会社が一部ありました。



最初は派遣として働くのに、正社員を想定した仕事を求められるジレンマはありました。見送られた人には、指示待ちなどの働く姿勢が関わったこともあるかもしれません。ただ、見送られた理由として何が多かったかは、何とも言えません。
働く人も、直接雇用を希望するか決められる
厚生労働省の業務取扱要領では、派遣先と働く人の意思を確かめて職業紹介を行い、その意思によっては職業紹介に至らないこともあるとされています。
そのため、働く人のほうから直接雇用を希望しないと伝えることもできます。働いてみて合わないと感じたら、早めに派遣会社の担当者へ、希望しない理由と意向を伝えてください。あわせて、今の派遣契約の満了日や必要な手続き、次の仕事の紹介について相談しましょう。契約途中で派遣の仕事を辞めたい場合は、そのことも別に伝えて、契約内容を確かめてください。
知っておくと損しない決まり


紹介予定派遣には、働く人を守るための決まりがあります。どれも厚生労働省の指針や業務取扱要領に書かれているものです。
直接雇用を見送られた理由は、求めれば書面でもらえる
ここで理由を求められるのは、紹介予定派遣で働いたあと、派遣先が職業紹介を希望しなかった場合や、紹介された人を直接雇用しなかった場合です。派遣前の選考での不採用の話ではありません。
その場合は、次の流れで理由を教えてもらえます。
- 働く人が派遣会社に、理由を知りたいと伝える
- 派遣会社が派遣先に、理由を明らかにするよう求める
- 派遣会社が、派遣先から示された理由を書面で伝える(本人が希望すれば、書面に出力できるメールなどでも受け取れる)
理由が分かれば、次の仕事を探すときの参考になります。直接雇用を見送られたときは、派遣会社に理由を聞いてください。
直接雇用のあとの試用期間は、「望ましくない」とされている
厚生労働省は、紹介予定派遣で直接雇用になったあとに改めて試用期間を設けることを「望ましくない」としています。そして、試用期間を設けないよう派遣先を指導するとしています。
私は、派遣期間中にすでに働きぶりを見てもらっていると考えます。直接雇用の条件に試用期間が入っていたら、理由を派遣会社に確かめてください。
3者が合意すれば、派遣期間を短くして直接雇用になれる
6か月は上限です。働く人・派遣先の会社・派遣会社の3者が合意すれば、派遣期間を短くして、早めに直接雇用へ切り替えることもできます。
派遣中にもらった内定は、普通の内定と同じように扱われる
派遣期間の途中で内定をもらうこともあります。その内定は、普通の転職でもらう内定と同じ扱いになります。会社が自由に取り消せるものではありません。
私が勧める人・勧めない人
私の経験から、紹介予定派遣を勧めるのは次のような人です。
- 働いてから、仕事の中身や職場の雰囲気を確かめて決めたい人
- 書類や面接だけでなく、働きぶりを見てほしい人
一方で、次のような人には勧めません。
- 派遣期間を挟まずに直接雇われて働きたい人
- 働きぶりで直接雇用を判断されることに強い負担を感じる人
- 言われた仕事だけをしていたい人
紹介予定派遣では、派遣先に直接雇われるまでに派遣として働く期間を挟むため、最初から直接雇用で働きたい人には勧めません。
派遣期間を挟まずに直接雇われて働きたい人は、正社員求人への直接応募や、転職エージェントを使う方法も比べてみてください。
申し込む前に、派遣会社に確かめること
紹介予定派遣の求人に申し込む前に、次のことを派遣会社の担当者に聞いておくと、あとで困りにくくなります。
- 直接雇用のあとの雇用形態は、正社員か、契約社員か
- 契約社員の場合、契約期間と更新条件はどうなっているか。正社員になる制度や、実際に正社員になった人はいるか
- 直接雇用後の月給の内訳・固定残業代の有無、賞与を含む年収、勤務時間・休日、仕事内容・勤務地とそれぞれの変更範囲
- 派遣中の時給
- 直接雇用のあとに、試用期間はあるか
- 派遣先に直接雇用を見送られたとき、理由をどう伝えてもらえるか
- 直接雇用後の有給休暇は、いつ何日付くか。派遣期間を勤務期間に含めるか
- 退職金制度がある場合、その算定に派遣期間を含めるか
- この求人で、これまでに何人が直接雇用になったか
- 就業中、担当者を通じて派遣先の評価や改善点を聞けるか
- 採否はいつ分かるか。見送りの場合に備えて、派遣会社との雇用契約の扱いや、次の候補・働き始められる時期を早めに相談できるか
有給休暇と退職金は、それぞれ派遣期間を含めるかを確かめてください。また、派遣前に示された予定条件は書面やメールで保存し、直接雇用を承諾する前に、最終的に示された条件と照らし合わせてください。
なお、派遣中の時給は、私が担当していたときは普通の派遣と同じくらいでした。そのときの相場に合わせて決めていました。
担当者がはっきり答えられない項目があれば、派遣先の会社に確認してもらってください。
希望する求人が見つからないときは
まずは、希望する勤務地・職種・直接雇用後の条件で、実際の求人を探してみてください。候補が見つからなければ、他の派遣会社が扱う求人や、正社員求人への直接応募・転職エージェントも比べてみることを勧めます。
まとめ:紹介予定派遣は、働いてから会社を決めたい人には使う価値がある
紹介予定派遣は、正社員になれるとは限らず、派遣中の働きぶりが直接雇用の判断材料になります。令和6年度の集計では、直接雇用になった人数は、派遣された人数の約54%でした(個人の採用確率ではありません)。また、会社によっては、紹介手数料のしくみから、最初の年収を抑えたいと考えることもあるかもしれません。
そのため、派遣期間を挟まずに直接雇われて働きたい人、働きぶりで直接雇用を判断されることに強い負担を感じる人、言われた仕事だけをしていたい人には勧めません。
それでも、働いてから会社を選べる点は、紹介予定派遣の良さです。使うと決めたら、申し込む前に、上のチェックリストを使って、派遣会社の担当者に聞いてみてください。


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